津田大介への公開質問状

わたしは、初めてまともに「在特会」によるヘイトを批判した津田大介の勇気と功績は認めるものの、彼がいまだに野間易通とその取り巻きである「しばき隊」を容認し続けていることは、どうしても看過できない。そもそも「しばき隊」は、発足当時からそうだったように、集団で刺青をひけらかしながら暴力をもって他者を恫喝し続けているのだが、今に至るもそこに反社会性と違法性を認めようとしない彼の態度は、ジャーナリストとしては疑問符がつかざるを得ない。

たとえそこに、反レイシズムとか、反ファシズムとかのお題目をどんなに大きく掲げようとも、それで違法性は阻却されないということが、どうも彼には理解できないようだ。現に昨年、「日韓国交断絶国民大行進」という明らかなレイシズムに基づく運動に、カウンターと称して殴り込みをかけた「男組」は、暴力等処罰法違反で幹部以下8人が逮捕されているのだが、そういう明らかな前例があるにもかかわらず、いまだに野間らを容認しようとする彼の態度は、わたしには理解し難い。

津田大介は、一連の事件を受けて、新潟日報上越支社の報道部長である「しばき隊」の坂本が起こした事件については、「職業倫理」から、その悪質さは一般人とは比較にならないと認めるものの、「はすみ事件」を評して、「行きすぎた行為」だが、「その是非はヘイトスピーチ対策とセットでされなければ意味がない」としている。

 

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しかし、この事件発生当時、「しばき隊」の久保田は、セキュリティ関連企業のF-Secure幹部社員であり、 日本スマートフォンセキュリティ協会のリーダーという半ば公職とも言える重要な地位についていたのであり、Facebookの規約に違反することを明らかに知りながら、その個人情報を抜き取った久保田の行為は、坂本と同様に「職業倫理」から見て、その悪質さは一般人とは比較にならないと思われる。

また、もしこの事件が、個人情報を不特定多数に公開された被害者から、裁判として提起された場合には、Facebookでの久保田の個人情報収集の過程で職業上入手した何らかのツールが使用されたことも疑われているだけに、職権濫用でさらに罪数が加重される可能性さえあると思われる。ところが、彼の主張を素直に読めば、津田はそれらの嫌疑には意図的に言及しようとはせず、「はすみとしこの世界」でのヘイト表現がそもそも悪いのだと、問題をすり替えようとしているとの印象を受けさえする。

もっとも、「しばき隊」の初期からのメンバーであると自認する神原元弁護士は、久保田の行為はFacebookの公開情報をまとめただけでそこに違法性はなく、逆にネット住民が久保田の個人情報を割り出して公開したことこそ違法であるとしているのだが、あたかも津田の主張は彼の論に、依拠しているかのようにも見える。

ただし、これについては「しばき隊」の神原元弁護士と対立している高島章弁護士が、電話帳ですでに公開されている世帯主や電話番号などの個人情報であっても、それをあらためて公開することは違法であるとの判例を示して、久保田の行為の違法性を、すでに平明に論駁している

 

電話帳に小さい活字で載っていた「世帯主・電話番号」(自分自身による公開情報)が、「銀座・新宿」の電光掲示板に公開(他者による公開情報の公開」は許されますか? 「緊急避難」なるもので正当化できますか?(本文ママ)

 

多少の法律の知識があれば、判例を示して平明に論駁する高島章弁護士の主張に法的な妥当性を認めざるを得ないと思われるのだが、津田はそう思っていないようだ。そう理解しなければ、久保田の明白な不法行為を、「行きすぎた行為」「その是非」などと、あたかも単なる倫理的な問題のみが俎上に上がっているかのように、ことさら書く理由がないからだ。

また、同時に、Facebookの該当ページ「はすみとしこの世界」に人種的なヘイト表現がされていたとしても、そのことが久保田の行為の違法性を阻却するいかなる事由にも該当するとは思えないことも、指摘せざるを得ない。

敢えて挙げれば「緊急避難」かとも思うが、高島章弁護士も指摘するように、「はすみとしこの世界」に「いいね」をしたりコメントしただけで、「急迫の危難」があったとして、自らの個人情報の公開範囲を決定する個々のFacebook使用者の意思に反してまで、その個人情報を不特定多数に公表することを正当化するのは、個々のプライバシー権を勘案すれば、明らかに無理がある。

ましてや、久保田と「しばき隊」は、この個人情報のリストを自身のアカウントを使ってTwitterで公開する際に「レイシスト」とのレッテルを貼り、不特定多数に私的制裁をするように教唆すらしており、これを「緊急避難」の法理で「公益性」のもとに正当化することは、どうみてもでもできそうもないと思われる。

これらの論点から、津田のしている主張は、今でも「しばき隊」およびそのメンバーである神原元弁護士の言うところに著しく偏っており、中立を旨とするジャーナリストとしては、完全にアウトだと、わたしは考える。

津田大介は「(自分は)しばき隊の仲間ではない」とTwitterで主張しているが、「しばき隊」は、その度重なる不法行為や触法行為の結果、彼ら自身が「身バレ」して特定されたことで、ようやく社会的な制裁を受けているのであり、この言葉だけで、これまでの彼の報道の中立性が、すなわち担保されたと言えるものではないと考える。

「毒を以て毒を制す」と言わんばかりの理屈で、これまで続けられてきた「しばき隊」の傍若無人な振る舞いを、少なくとも、今後も一般人が許容するとはとても思えないが、そうである以上、彼が「しばき隊」をこのように擁護し続けるのなら、それは必然的に、彼のジャーナリストとしての致命傷にならざるを得ない。彼はそのことをどこまで理解しているのだろうか?

 

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参考

セキュリティ会社元社員の個人情報流出事件の疑問点

高島章弁護士のTwilog